※はじめに※この小説には
・駄文
・自己満足
・厨二
・ネ友絵師の「(美麗)吉浦 未麗」さんが、扉絵を描いてくれました!大感謝!!
詳細は「あとがき」にて。
...
古より伝わる存在、【妖怪】。
彼らは「善」と「悪」に別れるが、その内「悪」の妖怪は人々に【古怪】と呼ばれ、恐れられていた。
しかし、そんな古よりの災厄を断つ「善」の妖怪も存在していたーー人々は彼らを【守護装妖怪】と呼んだのである。
...
守護怪鬼装伝
第二話「鬼装」
_朝だ。
私はのっそりとベッドから起き上がり、自分がまだ昨日の服装のままだった事に気付く。
どうやら疲れてベッドに突っ伏した結果、そのまま眠ってしまったようで、寝違えたのか身体の節々が少し痛い。
「......ん....」
新しい服に着替えつつ、私は昨日体験した奇妙な体験について思い出す。
迷い込んだ(なのか?)真っ暗な空間、演劇のラストとあまりにも似た情景...演劇ならそこで終わるんだけど__私の目の前に現れた新たな景色は、私を襲いかけた「何者か」を張り倒す、青い影だった。
とりあえず、薄れゆく意識の中で見たのはそれくらいで、他はハッキリとは覚えていない。
「...って、まずい!時間が...!」
ふと、手元の目覚まし時計を見て絶句する。
既に七時半を過ぎていた。
定例発表会の会場が開くのは八時半。
急いだ所で間に合うかどうか...といった感じだ。
慌てて演劇用の衣装をぐちゃっとバッグに突っ込み、勢いのまま階段を駆け下りる。
いつもなら遅く起きてゆっくり過ごす筈の土曜だが...今日は別だ。
綺麗に見える程度に歯を磨いた後、既に冷めかけていたトーストを引っ掴み口に詰め込む。
そしてそのまま、戸を開け放って自宅を飛び出した。
...
「はばい....はばい....っ....!」
トーストを咥えたまま一人、全力疾走。
昨日も良く走ったなと内心溜息を吐きつつ、昨日の下り坂__今は、上り坂を駆け上がる。
トーストに女子に住宅路...少女漫画なら、御約束の条件だ。
上り坂を何とか上りきったあと、会場に着くまでに一つ、曲がり角がある。
そこを曲がる事で、やっと会場が見えるのだが...ここまで来て、全て条件は揃ってしまったのだろう。
そう、私は出会ってしまったのだ。【色んな意味での】運命の相手に。
...
本を読んでいた。
といっても、かなり古い。
家に積んでいた蔵書から引っ張り出してきた物で、ガキの頃親父が好んでいた物でもある。
__そんな親父も、もうこの世にはいない。
親父どころか、母も、妹も、親戚も。
__俺の一族は、現状、俺しかいなかった。
無情にも血統とは、過去の宿命を強引に押し付ける物で、俺は仕方なく今の仕事をしている。
規約も緩いので(というか家族がいないので)、仕事が無い日はこうして、なるべく【人間として】過ごしているのだが_
本に気を取られ過ぎていたのがまずかった。
普段、俺の一族は感覚が研ぎ澄まされ、僅かな生気でもそこから生物の気配を察知する事が出来る。
この能力こそが、俺の一族の一番の強みだ。かくれんぼとかには滅法強い。
...いや、そんな話じゃなくて。
問題は、その能力が【任意で発動する】という事にある。
つまり、【何かに気を取られている時は発動出来ない】のだ。
俺は本に気を取られていた為、その能力を発動する事が出来なくて_
要するに何が言いたかったかというと、
_曲がり角で人とぶつかった。
...
「っ...たたた.....」
何かにどつかれたような感覚。
軽く尻餅を付いた所で目が醒めた。
「あの、すいま....」
_立ち上がった時、軽く言葉を失った。
スラリとした出で立ちに、少し赤みがかった茶髪。
着ている服は何故か和服で、古風な印象を感じさせた。
というか、言葉を失った点はそこじゃない。
「イケメン」だとか「美青年」だとか、そんなイメージが似合う男だったのだ。
「ふむ、どうした?ぼーっとして」
その美青年に言われ、ハッとなる。
少しばかり眺めていたなんて言える筈がない。
「え、いや、あの....」
言葉に詰まる。
そんな私を見た青年は、気にも留めずに私をスルー...
__って、あれ?
普通、そこはそちらも謝る筈じゃ...?
「あのー....少しは謝罪くらい...」
どうしてなのかは解らないが、足が彼を追っていた。
「はて、謝罪?...俺は【自分は悪くない】と思ったから、今こうして歩いているんだが」
...ムカッときた。
「ちょっと、常識って物は...」
と、少し口調を強めにして。
対する青年は、
「さっき言ったぞ、謝る必要が無いと思ったから今歩いていると」
と反省する気は微塵も持ってはいない様子。
更にイラついた私は、何を思ったのか来た道を引き返していた。
涼しい顔をしながら読書する彼を、速歩きで追っていたが為だ。
「あなた、日本人じゃないの?普通なら謝る所でしょ!」
「だから何度も....ふむ、確かに謝る所はあるな、【こんな面倒臭い事を引き起こしてしまった】っていう」
「だーかーらー!」
本から目を離さない彼に更にイラつきを憶えながら、私はどんどん歩を速める。
気付くと、何時の間にか小走りになっていた。
青年の方も逃げるように速足になり、私との差が広がっていく。
あとから知った事だが、既に発表会の会場からはかなり距離が空いていて_
今は最早、会場の面影さえ認める事が出来ない。
「はぁ...はぁ...」
どこまで走ったのだろうか。
息切れを起こしフラフラと歩いた所で、やっと青年に辿り着く。
「つ、捕まえた....」
振り向かせようと、青年の肩を掴んだ、その時だ。
「ちょっと、待て」
青年が平手で、前に出ないよう止められる。
丁度私が後ろにいるので、庇われているような状態だ。
「え...何?」
疑問を口にしようとしたその瞬間、
辺りは暗く、包まれた。
「っ...これ...昨日の...?」
昨日見た、真っ暗で、何もない、無の空間。
「っち....こんな時に...」
舌打ちのような音が聞こえる。
「ってことは....まさか!」
【まさか】というのには、理由がある。
昨日迷い込んだこの空間に現れたのは、私を追って来たのは_
青年が見据える方を向く。私は目の前の光景を目の当たりにし、絶句した。
人間の手足に、鋭い爪や牙。顔の部分は狼のようになっていて、猫背に構えるそれは、中々にグロテスクな印象だ。
「こ....こいつは....!?」
昨日の震えが、蘇る。
手で、震えあがる二の腕を必死に抑え、二本の脚で踏ん張り、立つ。
そんな時、目の前に立っていた青年は、言った。
「...こいつらは、太古より人間に危害を加えし存在、【古怪】」
「....え...?」
急な喋り出しだったので混乱してしまっていたが、青年の声が妙に落ち着いている、という事だけはハッキリ解った。
「...そして、俺はそんな【古怪】と戦う為の存在...」
私の前にすっくと立ち、腕を交差させる。
途端に、得体の知れない恐怖が、私の胸中をざわつかせた。
ぞくっと来るような、感覚。
「この男は、只者じゃない」と。
彼の背中に、大きく「鬼」と光の文字が浮かび上がる。それは回転しながら青年の頭上に浮かび、青い火の粉を撒き散らした。
「....守護鬼装、鬼牙(オウガ)!!」
_代々受け継がれし、紺の鬼。
_ 金色のその三本角と、蒼く輝くその鎧は
_闇を弾く剣にして
_最強の称号を持ちし、守護装なり。
「あ、あなたは...一体...!?」
収まるとそこには、既に青年の姿は無く。
紺に染まった体色に、黄金色の三本の鋭利なツノ。
昨日、私を救ってくれた、「青い影」そのものだった。
「話は後だ....ッ」
そう言うと【鬼牙】と名乗った鬼は走り出し、目の前の狼男(外観でそう判断しているだけだけど)に詰め寄っていく。
狼男は腕を振り上げ対抗しようとするが、鬼牙はそれを受け止め、勢いを活かし狼男ごと持ち上げ、地面に叩きつけた。
起き上がり、必死な形相で迫る狼男。
鬼牙は手間取る様子も無く、ひょいひょいと、軽い足取りで狼男の攻撃を躱していた。
「...凄い...!」
この前は意識が途切れ途切れだったが故にハッキリ認識する事が出来なかったが、今度はこの目で確認出来る_いや、その目ですら追えない速さだった。
「....〆ッ!!」
裂帛の掛け声と共に、鬼牙の右腕、握り拳が狼男の首元を貫く。
そして、そのまま手首を捻り、突き刺した首元から、右拳を引き抜いた。
堪らない一撃だったのか、狼男はその場に崩れ落ち、頭から斃れる。
そして、数秒もしない内に、灰になった。
気が付くと私は、その場にへたりと座り込んでいた。戦闘の迫力が圧倒的で、立ち上がれない程に。
「...大丈夫か」
頭上から声が聞こえる。
見上げると、先程まで【鬼】となっていた青年が、私に向かって手を差し伸べていた。
「....っ...立てるわ、これくらい」
慌てて青年の手を払い、立ち上がる。
辺り一面に暗かった無の空間は解除されたのか、目の前の景色は朝の住宅街に変わる。
「全く、何だったのよ......あ」
そこまで言いかけた所で、バッグに手を突っ込み、
スマホを取り出す。
表示された時刻は_八時二十分。
開場の、十分前だ。
そして私、非常に今更だが、会場からかなり離れていた事に気付き。
「...うわぁああああああああああ!!!」
_絶叫。
当然、事情を知らない青年は、私の突然の雄叫びにぎょっとし、身構える。
「...どうした?」
聞いても何も変わらないと思うけど_そう思いながら、私は
「演劇の発表会の会場に間に合わないのよ...今から行っても...絶対...」
と。
それを聞いた青年は、「ふむ」と考え、
「...道案内、頼めるか?」
と、言った。
「え?そりゃ出来るけど....」
「よし、なら決定だ」
そう言いつつ、青年は私に近付いてきて_
次の瞬間、私は青年に【抱えられた】。俗に言えば、【お姫様抱っこ】。
「ちょ....えぇっ!?」
あまりにも突然の出来事だった為に、混乱して現実の区別が付かない。
不覚にも、顔が真っ赤になった感覚を、ハッキリと感じた。
「...しっかり掴まってろ」
...どうしてこうなった。
私を抱えた青年は今、住宅街の屋根を跳びながら、真っ直ぐに進んでいる。
忍者物の映画とかならありそうな光景だ_いや、そんな話じゃなくて。
「ど、どうなってるのよっ!?」
「どうなってるって、その会場とやらに向かってる訳だが」
「それはっ...それはわかってるけどっ!」
私は今、そんな青年の首にしっかりと手を回している。
そうでもしないと、バランスを崩して落っこちる。
頰に当たる風は実際に空を飛んでいるような錯覚を起こし、今迄体験したどの絶叫マシンよりもスリルを感じた。
「お前、名は?」
そんな中、私を抱えて跳ぶ青年が、前を見据えながらそう言う。
聞かれて困る物じゃないので、私はとりあえず自分の名を名乗る事にした。
「...りゅっ....龍ヶ峰...閃っ!」
風で掻き消されないように、しっかりと。
「閃...か。俺は泡沫(ウタカタ)。【鬼】の...泡沫だ」
泡沫と名乗った、鬼の、和服の青年は前を向きながら、ほんの少し、笑みをこぼした。
会場に着き、私は降ろされる。
なんて危険な思いをしたんだろう...と思いつつスマホを確認すると、八時二十五分。開場の五分前だ。 「っ....やばいっ!」
入り口に向かい、走り出す。
ふと後ろを振り向くと、泡沫が小さく手を振っていた。
心の中でちょっとだけ「ありがとう」と思い、私は会場に飛び込んだ。
会場に着いてからはこっぴどく叱られた。監督にも、部活仲間にも。
でも、間に合ったから十分、と見逃してくれ(?)、演劇は無事、開演。
兎にも角にも、私は上々の結果を上げられたと思う。
だって、「頑張った」って思う気持ちが、胸の中にはあるから。
_しかし。
家に帰る頃には、そんな気持ちは既に薄れかけていて。
しつこく頭の中によぎるのは、青と金のあの鬼と、泡沫が僅かに見せた、小さな笑みだった。
続
あとがき
という訳で、「守護怪鬼装伝」第二話でした!
今回いよいよ(まだ二話目だけど)物語の主軸である「守護装妖怪」である「泡沫」が登場、ヒーローである「守護鬼装 鬼牙」という名前も現れました。
問題はここからです。果たして、ODENはgdらずに書き切れるのか...?
はい、とまあ、そんな感じです。←
で、あと、もう一つ。
今回から、知人のネ友絵師「(美麗)吉浦 未麗」さんに物語の扉絵を描いて頂く事になりました!
記念すべき初イラストは、物語のヒロインであり主人公、「龍ヶ峰 閃」
ちゃん!
私の脳内妄想イメージにピッタリで、非常に感動しております。
これからも女キャラはどんどん登場させるつもりですので、こんな奴ですが、ゆっくりのんびりと、よろしくお願いしますね!
と、いうわけでお送りした「守護怪鬼装伝」第二話、次回の更新はまた不定期になりますが、ゆっくり気長に見守っていただけると、幸いです。
ではでは。
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